建築ギャラリー
梅樹の家
建主の親戚が住んでいた跡地につくったのが、この「梅樹の家」です。竹林を背景に雑草が生い茂る状態でしたが、その中に古い梅の木を見つけました。家の設計は、その梅の木をシンボルツリ−として残す方向で進めました。
玄関からは水音が聴こえ、中庭の梅の木を垣間見ることができます。玄関右脇に配した和室の客間は、障子戸を開けると梅の木と枯山水の庭が広がります。和室と対峙するのはゲストリビングです。中庭と一体感を持たせるために床を一段低くして地面に近づけるとともに、テラスと水盤を設けました。玄関で聴こえる水音の正体は、この水盤に落ちる水流です。
私は家を設計する際、光や温熱環境はもちろん、水や風の音の存在を考えます。LDKをはじめ、すべての場所で景観、光、風の抜けなどを検討します。
この家はさまざまな居場所からシンボルツリ−が見えるようにつくりましたが、建主の叔母さんから「父も喜んでいると思います」との言葉をいただきました。子どもたちが大人になったときに、梅の木と家族の記憶を思い出してくれたら…と、密かに願っています。